
AI議事録ツールの選び方、ほとんどの会社が間違えている
「AI議事録ツールを導入したが、議事録作成に時間がかかる問題は解決しなかった」——Lat91に相談に来る中小企業の担当者から、この言葉を聞く頻度が増えた。ツールを入れたのに効果がない。なぜか。
答えは単純だ。ほとんどの会社が「文字起こし精度が高いツールを1本選んで全部やらせようとする」から失敗する。AI議事録ツールが解決する問題は、じつは3つに分かれており、それぞれ専用の設計を持つツールが存在する。1本で全部やろうとすると、どれも中途半端になる。
この記事では、2026年時点で実務で使えるAI議事録ツールの選び方を、3フェーズの組み合わせ戦略として解説する。NotebookLM・Plaud・Nottaを例に、どの局面で何を使うべきかを具体的に示す。
なぜ「1本に絞る」戦略は失敗するのか
AI議事録ツールに何を期待しているかを聞くと、多くの担当者が「会議の内容を自動でまとめてほしい」と答える。当然の要望だが、この「まとめる」という言葉の中に、まったく異なる3つの仕事が混在している。
フェーズ1:録音・文字起こし。会議中にリアルタイムで音声を取得し、テキスト化する仕事だ。精度・対応言語・ノイズ耐性がここでの評価軸になる。
フェーズ2:要約・アクション抽出。長い文字起こしを読みやすく整理し、「誰が何をいつまでに」を抽出する仕事だ。構造化の巧みさとビジネス文脈の理解が問われる。
フェーズ3:ナレッジ化・検索・活用。過去の会議データを蓄積し、後から「あの会議でXについて何が決まったか」を検索・参照できるようにする仕事だ。
3つは解決するレイヤーが違う。フェーズ1はリアルタイム処理の最適化問題、フェーズ2はLLMの要約性能、フェーズ3はRAG(検索拡張生成)の設計問題だ。1本のツールが3つ全てで最高水準を出すのは原理的に難しい。
図1: AI議事録の3フェーズと代表ツール
主要ツール別:何が得意で何が苦手か
2026年時点で日本の中小企業が選ぶ候補は、大きく5つに絞れる。それぞれの「本当の強み」を整理する。
Plaud NOTE:対面会議の「確実な録音」に特化したハードウェア
Plaudはスマートフォン型の専用録音デバイスだ。Zoom・Teams等のオンライン会議には向かず、対面会議での音声取得に特化している。ポイントは「確実に録れること」。会議室のノイズ、複数人が同時に話す場面でも精度が落ちにくい設計になっている。
文字起こしと基本的な要約は内蔵機能で対応できるが、複雑なアクション整理や組織横断の検索には向かない。「とにかく対面の会議記録を確実にテキスト化したい」というニーズに応える入口ツールとして使うのが正解だ。
Notta:Web会議から対面まで、コスパ最高の議事録生成
Nottaは月額1,200〜2,000円程度で、Web会議の自動文字起こしから要約・TODO抽出まで一気通貫で対応する。日本語精度が高く、法人利用にも耐えられるセキュリティ水準を持つ。無料プランで毎月120分まで使えるため、まず試すならNottaから始めるのが効率的だ。
弱点はナレッジ化だ。Nottaは個別の会議記録を整理するのは得意だが、「先月の営業会議でXについて何が決まったか」を横断検索するためには、別のシステムと連携する必要がある。
Google NotebookLM:ナレッジ化フェーズに圧倒的な強みを持つ異色ツール
NotebookLMの位置づけを誤解している人が多い。このツールは「議事録を作るツール」ではない。「蓄積されたドキュメントを対話的に検索・活用するツール」だ。
正しい使い方はこうだ。NottaやPlaudで生成した議事録テキストを、プロジェクトごとのNotebookLMに蓄積していく。すると「このプロジェクトで予算について議論したのはいつ?」「3ヶ月前にXさんが提案していた代替案の詳細は?」という質問に、NotebookLMが過去の議事録から回答を引いてくれる。個別ドキュメントではなく、組織の記憶として機能する状態を作れる。
なお、2026年時点でNotebookLMのAudio Overview(音声解説)機能は英語のみの対応となっており、日本語コンテンツのリアルタイム音声変換は対象外だ。会議音声の直接取り込みも可能になりつつあるが、文字起こし精度はNottaなど専用ツールに及ばない。NotebookLMはあくまで「フェーズ3専用」として使うのが2026年の最適解だ。
tl;dv:Web会議の録画からハイライト検索まで、グローバル企業の標準
tl;dvはZoom・Teams・Google Meetの会議を自動録画し、話題ごとにタイムスタンプを打ってハイライトを生成する。特に「会議の一部だけ他のメンバーに共有する」「週次MTGのポイントだけ上長に送る」という使い方で強みが出る。
グローバルチームや多部署連携が多い企業に向いている。日本語の精度は1〜2年前に比べて大幅に向上しており、2026年時点では実務水準に達している。
Rimo Voice:日本語精度と法人セキュリティを最優先するなら
Rimo Voiceは日本語特化の議事録ツールで、医療・法務・金融など機密性の高い業種での採用実績がある。文字起こし精度と誤字修正の品質において、2026年時点でも国内最高水準の評価を受けている。料金は割高だが、情報漏洩リスクを最小化したい組織には選択肢として残る。
Lat91流の組み合わせ:私たちが実際にやっていること
私たちLat91では、社内会議の記録に3ツール体制を採用している。具体的に言うと、オンライン会議はNotta(フェーズ1+2)、対面の重要な議論はPlaud NOTE(フェーズ1)、そして蓄積はプロジェクト別のNotebookLM(フェーズ3)だ。
以前は「Nottaだけ使う」体制だったが、3ヶ月後に問題が起きた。議事録は毎回生成できるのに、「あの時の判断はなぜだったか」を遡ろうとすると、スプレッドシートで検索しなければならなかった。議事録が「記録」で終わっていて「ナレッジ」になっていなかった。
NotebookLMを導入して変わったのは、新しいメンバーが加わったときだ。プロジェクトの文脈を伝える時間が劇的に短くなった。NotebookLMに「このプロジェクトの背景を教えて」と聞けば、過去の議事録から要点を拾って説明してくれる。オンボーディングの質が変わった。
ただし、一点注意がある。NotebookLMに入れる議事録の品質が低いと、回答の質も低くなる。ゴミを入れたらゴミが出てくる、という原則はここでも生きている。NottaやPlaudで丁寧にフェーズ1〜2を処理したものだけをNotebookLMに送る、という運用が必須だ。
海外の先進事例:会議ナレッジをプロダクト開発に活かすSpotify流
スウェーデンのSpotifyは、社内会議のナレッジを製品意思決定に活かす仕組みを2024年から構築している。デザインレビューや製品企画の会議をAI議事録ツール(tl;dvを含む複数)で全量記録し、LLMで構造化した上で、製品判断を問い合わせると過去の類似議論をサジェストするシステムを内製した。
このシステムにより、同じ議論を繰り返す「ミーティングの再発率」が23%低下したと同社は報告している(出典: Spotify Engineering Blog, 2025)。新しいプロダクトマネージャーが判断を下す前に「過去に同じ問いをどう議論したか」を参照できるようになり、意思決定の質と速度が両立した。
日本の中小企業でSpotify規模のシステムを作る必要はないが、「会議ナレッジをNotebookLMに溜める」という初手は、今日から無料で始められる同じ方向の取り組みだ。
今週から始める:段階的な導入ステップ
「すべてのツールをいきなり導入する」必要はない。まず週1本の会議から始めるのが、失敗しない進め方だ。
Step 1(今週):Nottaの無料プランで、最も議事録作成に時間がかかっている会議タイプを1つ選んで試す。文字起こし精度と要約品質を確認する。
Step 2(2〜4週目):NottaかPlaudで議事録を量産できる体制を作る。要約フォーマットを社内で統一する(誰が・何を・いつまでに、の3点が必ず入るように)。
Step 3(1ヶ月後〜):NotebookLMにプロジェクト単位でノートブックを作り、議事録を溜め始める。1ヶ月で10〜20本溜まったら、「過去の決定事項を検索する」使い方を試す。
投資対効果の目安として、月額1,200〜3,000円のAI議事録ツールを1本導入するだけで、週1時間以上の議事録作成時間を削減できることが多い。時給換算すると、初月でコストを回収できる計算になる場合がほとんどだ。
よくある疑問と反論:「既存のビデオ会議ツールの記録機能で十分では?」
ZoomやTeamsにも自動文字起こし機能があり、「追加ツールは不要では?」という意見は正当だ。ただし、現時点での差は3点ある。
第一に、日本語の精度だ。2026年時点でZoom・Teamsの日本語文字起こし精度は「使えるレベル」に達しているが、専用ツールの方が誤字・固有名詞の精度で一枚上だ。第二に、要約とアクション抽出だ。「誰が何をいつまでに」を抽出する構造化は、Zoom標準よりNottaやFirefliesの方が洗練されている。第三に、ナレッジ化だ。これはZoom・Teamsでは対応していない領域で、NotebookLMとの組み合わせが必要になる。
「既存ツールで何とかなっている」という会社がぶつかる壁は、たいてい半年後だ。「6ヶ月分の会議記録が無法地帯になっている」という状態になってから整備しようとすると、コストが数倍かかる。今のうちに設計を決めておく価値は高い。
図2: 段階的な導入ステップ
まとめ
- AI議事録ツールは「録音・要約・ナレッジ化」の3フェーズに分かれ、1本で全部やろうとすると中途半端になる
- Plaud:対面会議の確実な録音、Notta:Web会議からTODO抽出まで、NotebookLM:組織の記憶として蓄積、という役割分担が2026年の最適解だ
- NotebookLMは「議事録を作るツール」ではなく「蓄積された議事録から検索・活用するツール」として使う
- まず今週、Notta無料版で週1本の会議を試すことから始める。投資対効果は初月で回収できることが多い
- 半年後に「会議記録が無法地帯になっている」状態を避けるために、今のうちに3フェーズの設計を決めておく
AI議事録ツールの本質は、記録を減らすことではなく、会議のナレッジを組織資産に変えることだ。その視点で設計すると、ツール選びの基準が変わる。
Lat91では、AIを使った業務設計の相談を無料で受け付けています。「どのツールを選べばいいかわからない」「既存の会議フローに合わせた設計をしたい」という方は、気軽にご相談ください。